逆オイルショック

【よみ】
ぎゃくおいるしょっく
【英名】
Reverse oil shock

原油価格の急落とそれに伴う世界的混乱を意味し、これまで3回ほど起きている。1973年の第一次、1979年の第二次の原油価格高騰「オイルショック」と対比する言葉である。原油はガソリンやジェット燃料などのエネルギーだけでなく、人工繊維やプラスチックなど高分子化合物の原料でもあり、物価に与える影響が大きく、FX(外国為替)や株価、金利が大きく動く場合が多い。

1回目の逆オイルショックは1986年。1980年代に入り世界的な景気減速に伴って原油の需要が減少する中で、サウジアラビアは自国の産油量を減産し市場の価格を引き上げる「スイングプロデューサー」の役割を引き受けとしピーク時の日量約1000万バレルの4~5分の1程度まで大幅な減産を行うこととなった。一方で、北海油田などの非OPEC地域の産油量の増加とサウジアラビア以外のOPEC産油国の減産回避、または、増産によって供給過多となり、原油価格は上がらなかったため、ついに堪忍袋の緒が切れたサウジアラビアは1985年12月のOPCE総会で「シェア奪回宣言」をし、増産に転じた。すると原油価格は1985年10月の1バレル=30ドル台から1986年2月には1バレル=15ドル台まで半落。同年3月末には1バレル=10.42ドルを記録し、価格の低迷は同年末まで続いた。

2回目の逆オイルショックは2014年。アメリカのシェール革命とOPECの減産回避により原油の供給が拡大する一方で、中国、欧州などでの景気低迷により原油の需要は減少。原油価格が下落していく局面で、1986年の失敗もあったためかサウジアラビアはスイングプロデューサーの役割を拒否。そのため原油価格は更に下落し、2015年7月の1バレル=100ドル台から2016年2月には1バレル=26ドル台まで1/4の水準へ下落した。外国為替ではこれを受けて豪ドルやカナダドルなどの資源国通貨売りの展開に。豪ドル円は2015年7月の94円台から2016年2月には77円台半ばまで、カナダドル円も同時期に98円台から79円台まで下落した。

3回目の逆オイルショックは2020年。新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行に伴う原油の需要減少から、同年3月6日、OPEC加盟国とOPEC非加盟国(OPECプラス)は生産調整を協議したが交渉は決裂。更にサウジアラビア、ロシアは増産を決定した。これにより、(需要減少から)供給過剰とみられていた原油価格は3月6日の1バレル=41.28ドルから3月9日には31.13ドルまで急落。下落率は前週末比25%となり、湾岸戦争がはじまった1991年1月に次ぐ過去2番目の大きさとなった。その後も原油価格は下落を続け3月18日に1バレル=20ドル台まで落ち込んでいる。外国為替でもリスク回避姿勢が強まり、同年2月下旬から3月上旬のわずか3週間足らずで、1ドル=112円台から101円台まで急落。2016年11月のトランプショック以来のドル安・円高水準となった。

また、この原油安を受けて生産コストの高い米シェールオイル企業の多くが採算割れとなっており破綻の可能性がささやかれていたが、2020年4月1日にホワイティング・ペトロリアム社が米連邦破産法第11条(チャプター11)の適用を申請。2020年の逆オイルショックでの初の上場企業の破綻となった。

2020年4月1日 更新